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連載:kazaya
SS作者、kazaya様の提供でお送りします。

 
 
 しーーーーん。
 今、この場は、張り詰めた空気に支配されていた。
 といっても、睨みを利かせているのは、艦隊内一のレベルを誇る叢雲たん。
 対する島風と雪風は、レベル1の新人ルーキー。
「さて、提督が気をきかせて、私達だけにしてくれたわ。その気持ちを不意にしないためにも、さくっと自己紹介しちゃいましょうか?」
 額に汗を浮かべながら、霧島がそう促す。
「そ、そうね。提督がそういうのなら、仕方ないわよね」
 叢雲たんは、この場にいる者に聞かせるかのように呟いた。
 





「え、えっと、それでは先に。はじめまして、雪風です」
 一見、普通の自己紹介かとおもいきや。
「皆さん、戦いは奇跡の連続だと思っていませんか? それは大間違いっ!! 奇跡は願うのではなく、自らの手で起こすものだと、私は思うんですっ! こうして、出会えたのも何かの縁。日々の演習、遠征、そして出撃! どれも全て、大切なこと! チームワークや連携を大事に、私もこの艦隊を勝利に導けるよう、気合いを入れていきたいと思いますっ!! よろしくお願いしますっ!!」
 かなり熱血だった。ちょっとばかし、叢雲たんが圧倒されかけているのは、気のせいに違いない。
「それはそれは、素敵な演説、ありがとう。次は島風ちゃんね?」
 霧島に促されて、今度は島風が前に出る。
「……島風です。どうぞよろしく」
 ぺこっと頭を下げて、終わった。
 それだけだった。
「っ!! ちょ、ちょっと、あんた、それだけ!?」
 思わず叢雲たんが突っ込む。
「……話すのは、得意じゃないんで」
「そりゃ、あの雪風の後なら、言い辛いでしょうね。けどっ! これから戦場を共にするんだから、もう少し何か言ったらどうなのよっ! えっ!?」
 やけに叢雲たんが突っかかる。
 恐らくこれも、提督のお気に入りだから……だろう。
「これから死ぬかもしれない戦場で、残す言葉はないわ」
 やや眠そうな瞳で、島風は言う。
「私は持てる力の全てを現場で発揮するだけ。後悔しないよう、全力を尽くすのみ。そうでしょ?」
「……っ!!」
 逆に言いくるめられてしまった。
 こんなはずじゃなかったと、叢雲たんは、心の中で地団駄を踏む。
「そ、そうね。私達は提督の御指示通り、戦い、勝利をもたらす者。それ以上でもそれ以下でもないわ。せいぜい頑張りなさいっ!!」
 そう言い残して、叢雲たんはぷいっと部屋を後にしていく。
「…………ううう、ちょっと怖い人でした」
 雪風が思わず、息つくかのように呟いた。
「まあ、あれでも、あなた達を仲間だと認めてるのよ。たぶん」
 苦笑しながら霧島は、雪風と島風、二人の肩を叩く。
「……お姉さま」
 ぽつりと、島風が呟いた。
「へっ?」
 思わず、変な声が上がる霧島。
 けれど、その声に返答する者はなく。

 波乱に満ちた(?)互いの接触は、こうして幕を下ろしたのである。


●おまけ●
「……これ、お姉さま」
 島風の部屋に、新たな愛らしいぬいぐるみが追加された。
 それは、叢雲たんを模した、ぬいぐるみだった。
 ちょっとだけ、目が釣りあがっていたが。