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連載:kazaya
SS作者、kazaya様の提供でお送りします。



 今日もまた、叢雲たんはため息をついている。 
「ちょっと、どうしたのよ? 叢雲ちゃん」 
 たまらず声をかけたのは、霧島。 
「なんでもない」 
「なんでもあるでしょ? その顔」 
 霧島はぷにっと、叢雲たんのほっぺを摘む。 
「な、なんでもないんだってばっ!!」 
「それにしては、深すぎるため息じゃないの? まあまあ、私以外、誰も居ないし、ほーら、霧島姉さんに話してごらん?」 
「……」 
 叢雲たんは、しぶしぶ口を開く。

 





「どうして提督は、いっつもいっつも金剛ばっかり探すのよっ」 
 ああと、霧島は呟く。 
「確か、金剛が来たら、達成できる任務があるみたいよ? それを達成させたいみたい」 
 ばんと机を叩いて、叢雲たんは声を荒げる。 
「それにしたって! ここに居ない金剛の事ばっかり!」 
 ちょっぴりその剣幕に驚きながらも、霧島は。 
「ははーん、なるほどね」 
「な、何よっ。酸素魚雷喰らう?」 
「それは遠慮します」 
 じゃなくって、と霧島は続ける。 
「叢雲ちゃんが不機嫌な理由が分かったわ」 
「な、何よ、それ……」 
「そういえば、前に提督が来ない日があったわよね?」 
「う、うん……まあ……」 
 霧島はにんまりと笑みを浮かべながら続けた。 
「そのときも叢雲ちゃんは不機嫌だった」 
「……そう、かもね……」 
「私が着任したときも、睨まれたしね」 
「そ、そう……だったっけ?」 
「ねえ、叢雲ちゃん。提督が死んだらどうする?」 
「一緒に殉職するに決まってるでしょ!」 
「はい、それが答え」 
「……えっ?」 

 やれやれと自分の肩を揉みつつ、霧島はくいっと眼鏡を上げる。 
「叢雲ちゃんってば、提督が好きなのね。だから、嫉妬した」 
「なっ!! ち、ちがっ!!」 
「まあ、私も嫌いじゃないわ。叢雲ちゃんほどの愛には負けるけど」 
「っ!!」 
 嫉妬むき出しの視線に霧島は笑って、叢雲たんの鼻をつつく。 
「だーかーら、愛してるって意味じゃなくって、フレンドの方。もう、艦隊一の駆逐艦に目を付けられたら、夜も眠れやしないじゃない」 
 そう告げて、霧島は続ける。 
「いい? 面倒だから、一度しか言わないわよ?」 
 こくりと頷く叢雲たんに霧島は微笑む。 
「提督がいつも貴女を秘書艦にしてるわよね?」 
「う、うん」 
「第一艦隊名に貴女の名前を入れている」 
「う、うん」 
「一番レベルの高い艦は、貴女よね?」 
「う、うん……」 
「そして、一番近代化改修してるのは、貴女」 
「………」 
「それから、導き出される答えは一つ!」 
「な、何?」 

 びしっと指を叢雲たんに指差して、霧島は告げた。 
「貴女のことをだれよりも気に入ってるってことよっ!!」 
「っ!!」 
 ぼっと顔を火照らせ、叢雲たんは言葉を失う。 
「まあ、そういうわけだから、もうため息なんて……」 
 そう霧島が言おうとしたとき、遠くから声が聞こえた。 

「提督が鎮府守に着任しましたー」 
「い、今行くわっ!!」 
 だっと叢雲たんは、走って部屋を出て行く。 
「ふう、これでしばらくは機嫌がいいかしらね?」 
 そんな彼女を霧島は、見送って。 
「さてっと、私も提督の元へ行くとしましょうか」 
 ふと見た窓から見える空は、何処までも蒼く澄んでいた……。